東京地下鉄

 日本で初めての地下鉄を開業させた東京高速鉄道をルーツとして設立された帝都高速度交通営団(営団)が、組織変更して平成16年に誕生したのが東京地下鉄株式会社です。一般的には東京メトロという名で親しまれています(本稿も以後この名で表記)。
 営団は国と東京都が首都の地下鉄を保有するための特殊法人として存在していましたが、現在の形態は出資が国と都になっている特別会社となっており、近い将来株式を上場などで売却したあかつきには、一般の会社と同様の形態になります。
 東京メトロは最初に開業した銀座線のほかに8線を所有し、総延長距離は195.1kmに至っています。東京都交通局の4線も含めて、世界有数の地下鉄ネットワークを築き上げています。
 首都東京の地下だけでもこの緻密なネットワークを築き上げていますが、昭和37年に日比谷線が東武鉄道伊勢崎線と開始したのを皮切りに、郊外に延びる私鉄、国鉄(当時)線との相互直通運転を積極的に行い、他社と手を組んで関東近郊区間内のネットワーク拡充にも取り組んできました。現在は、第3軌条方式の銀座線、丸ノ内線以外の7線で他社線区との相互直通運転を行い、有楽町線と副都心線以外の5線では両端側で実施しています。
 地下鉄に専念していた印象が強かった同社も、最近では商業施設を展開し始めるなど、他の大手私鉄同様に経営領域を広げ、外部宣伝も積極的に行うなど、イメージを変えつつあります。
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03系。昭和63年に登場した日比谷線用の電車。初代日比谷線用車両3000系の置換え用として製造されたが、3000系のステンレスからこちらはアルミ製の車体となり、ラインカラーのグレーの帯を幕というスタイルにになった。前面は新系列車のハシリとなった銀座線01系の系譜を継ぐように、ブラックフェイスとなったが、角は丸みを帯び、窓には傾斜がつく。
編成は8両となっている。制御方式はチョッパ制御が当初は採用されたが、後年になって登場したグループはVVVFインバータ制御方式に変更されている。平成2年度から5年度まで製造された20本は、年々混雑の度合いが増す北千住口の朝ラッシュ時の円滑な乗降を図るために、両端2両ずつ4両を5ドアにして製造された。
平成6年に3000系をすべて置換え、以降、日比谷線の営団〜東京メトロ所有車はすべて03系となっている。運用範囲について、北は東武伊勢崎線東武動物公園駅から日比谷線を潜り抜けて南は東急東横線菊名駅まで乗り入れているが、3社間通しの運用はない。

写真上:5ドア仕様の編成は前面にそれを示すシールが貼ってある  東武伊勢崎線 大袋・北越谷間 2009.12.31
写真下:全車3ドアの編成。運転士右下には”V”のシールがあるが、VVVFインバータ制御車であることを示す
東武伊勢崎線 大袋・北越谷間 2010.1.31
6000系。昭和43年に登場した千代田線用の電車。千代田線は常磐線、小田急線との相直乗入を行うために車体の規格を20m級4ドア車とされた。
6000系はアルミ合金車体で、チョッパ制御方式が採用されたが、当時の最新技術が惜しみもなく投入された電車であった。前面は天地寸法が大きく取られたフロントガラスを運転士側に寄せ、助士席側に非常階段を格納した窓なしの貫通扉を設置、右端に細窓を配するというスタイルになり、時代の遥か先を行くデザインであった。
路線の延長や本数の増加などに伴い増備を重ね、昭和56年以降に製造された編成からは、側窓が2段式から一段下降式に変更され、天地寸法も拡大された。増備は平成2年までの22年間に渡り、先述した以外にも、ロット毎の小さな差異が多く見られる。
昭和63年からは冷房装置の搭載も含めて大がかりな更新工事をが進められるようになり、さらにヴァリエーションが豊かな形式となったが、制御方式がVVVFインバータ制御方式に変更された編成も出てきた。
製造後40年経った今も、千代田線の東京メトロ所有の車両は一本しかない06系を除いて、6000系になっている。相互乗り入れしてくるJRや小田急の車両はすでに3代目になっているが、当系列はちっとも古ぼけていない。

写真:
昭和46年に登場した6111F。前面行先表示のLED化や側窓の一段下降窓化などの更新工事を受けて、オリジナルの姿から変わっている。 小田急小田原線 成城学園前・喜多見間 2009.1.25
7000系。昭和49年に登場した有楽町線用の電車。6000系の有楽町線版というべき存在で、基本的な車体構造は同系に似ている。ただ、側面の方向幕が車端部に寄せられたほか、当初は5両編成で登場し、路線延伸時に10両に増強された。最初に製造された20本は側窓が2段式になっていたが、増結中間車と第21編成以降は一段下降窓になっている。走行機器は6000系のチョッパ制御を改良したものを採用している。
6000系同様の更新工事は平成6年から開始され、一部編成の制御方式がVVVFインバータ制御に改められた。平成20年になって副都心線が開業したことで、一部の編成は副都心線にも入線が出来るように改造され、ワンマン運転対応機器が搭載されるなどの工事がなされた。帯もゴールドから10000系と同様のブラウン、ゴールド、ホワイトの3色になった。また、副都心線は一部が8連での運転となるため、中間車2両が抜かれた編成が生じた。しかしながら、改造の対象とはならなかった編成は廃車が進んでいる。

写真:
昭和62年からは東武東上線に乗り入れるようになった7000系 東武東上線 柳瀬川・志木間 2010.2.6
10000系。平成18年に登場した有楽町線、副都心線用の電車。東京地下鉄初の新系列車である。
アルミ合金製車体であるが、従来の車両に比べて軽量化が図られ、また、難燃対策も強化された。前面は従来の7000系が直線的であったとのは対照的に曲面が多用され、上から下に弧を描くようなスタイルになった。非常用の貫通扉は真ん中に配置され、ソフトなイメージとなった。
走行機器はVVVFインバータ制御方式で、副都心線での使用を当初から念頭に置かれていたため、ワンマン運転の対応機器を当初から搭載している。10両固定編成となっているが、副都心線での運用には8両編成用のものもあり、第1〜5編成のどれかから、中間車を外して充当される。
現在は7000系同様有楽町線、副都心線で使用される。この両線において、10両編成は共通で使用されている。また、東武東上線、西武有楽町、池袋線にも7000系とともに乗り入れている。

写真:東武東上線 川越・新河岸間 2010.2.14
8000系。昭和55年に登場した半蔵門線用の電車。有楽町線用7000系をベースにした車両であるが、前面の傾斜の折れ曲がりが下部に移り、運行表示部は前面窓から独立した箇所に配された。額縁があるのもポイントである。側面は当初から一段下降窓で設計されており、逆に6000系や7000系の後期製造車のデザインに踏襲されている。走行機器は7000系のものを改良したものになっている。当初は6両編成で登場したが、後に10両編成に増強された。
6000系や7000系に比べると製造年次による差異はそれほど見られないが、10連化工事が最後のほうに行われた編成は、客室窓、客室ドア窓の大型化や車高の変更がなされた車両が2両組み込まれ、編成中で目立つ存在となっている。
平成16年より更新工事が開始され、VVVF化インバータ制御化、客室ドア窓の大型化といった改造がなされている。2010年2月時点で10両編成19本が配置されており、東武日光線南栗橋/伊勢崎線久喜〜東急田園都市線中央林間の長距離で運用されている。
なお、一部の編成は、昭和62年に東西線の応援にかけつけ、その際はJR線にも入線していた。

写真:4両目と5両目は最終増備車で裾の高さが異なっている 
東武伊勢崎線 大袋・北越谷間 
2010.2.6
08系。平成15年に登場した半蔵門線用の電車。同年3月には半蔵門線が水天宮前から押上まで延長され、それに併せて東武線との相互直通運転を開始することで、増加する運用本数を確保するために新製された。
8000系と同様のアルミ車体であるが、車体強度の向上がなされている。前面は東西線05系の最終増備の編成をベースに、ブラックフェイスになり、多角形状の直線的なデザインとなった。側面は張り上げ屋根になっており、窓は天地寸法が拡大された一段下降窓が並んでいる。制御装置はVVVFインバータ制御方式となっている。実際の運行で出すことはないが、最高速度は8000系の100km/hから120km/hに上げられている。
2010年2月時点で10両編成6本が配置され、8000系と共通で使用されている。なお、東武伊勢崎線には日比谷線も乗り入れるが、日比谷線からの電車は普通で運転されるのに対し、半蔵門線からの電車は急行(朝、深夜に準急もあり)で運転される。

写真:伊勢崎線 大袋・北越谷間 2009.12.27



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