近畿日本鉄道

 近畿日本鉄道、略して近鉄は、大阪を本社に置く会社ですが、大阪府を始め、京都府、奈良県、三重県、愛知県にも路線網を展開しており、その長さたるや501.2kmにも及び、民鉄界最大規模を誇ります。メインルートは大阪・伊勢/名古屋間となり、その後、このラインを中心に志摩半島方面などへ路線網を展開していきましたが、同時に京都、大阪から奈良、吉野へ至るルートも本線としての位置づけがなされ、多くの利用客を集めています。
 近鉄を特徴付けるのは何といっても運転本数が多く、緻密な連携を保つ特急列車群。メインルートを高頻度で疾駆していくシーンは実に華やいでいます。古くから2階建車ビスタ・カーなどの豪華な車両が走っていることも、よりその印象を強いものとしています。
 そのかたわらで、第3軌条を採用するけいはんな線など、個性的な路線もあり、非常に楽しい鉄道であると思います。
特急・団体型車両 通勤型車両
21020系。2002年に登場した。21000系修繕工事に伴う車両不足を補うべく、6両編成2本が製造された。21000系”アーバンライナー”の後継車両ということで、”アーバンライナーNEXT”という愛称になった。21000系と同様に、6両固定編成であるが、電動機の出力が上げられたことや、VVVFインバータ制御方式の採用などで、3M3Tの組成となっている。
車体は側面窓の天地寸法が拡大されたほか、ピラーがなくなった前面窓の回りが黒く塗られたことが、21000系と異なる。デラックス・カーは1両のみとなった。
2本とも名阪甲特急に使用されている。
写真:名古屋線 高田本山・江戸橋間 2009.10.12
5200系。1988年に登場した。長距離を走る急行、快速急行に使用されることを前提として、3ドア転換クロスシート配置の室内となっている。4両編成からなり、両先頭車には便所が設置された。
近鉄一般車には珍しく、前面にパノラミックウインドウが採用され、側面には連続窓が配されている。制御方式はVVVFインバータ制御となっている。
現在、13本が配置されているが、大阪線で使用される編成は、(快速)急行以外での運用も多くなっている。
写真:山田線 漕代・斎宮間 2015.2.14
21000系。1988年に名阪甲特急(ノンストップ)用として登場した”アーバンライナー”。12600系以来6年ぶりの新系列車両となった当形式は、前面がスラントノーズタイプの非貫通形式となり、装いも白をベースにしたものへと改められ、これまでの近鉄特急のイメージを一新したものとなった。名阪特急の復権にかける近鉄の意気込みが伝わってくる車両であった。他形式との併結は考慮されない6両固定編成とされた(増結して8両になる場合もある)が、全車が電動車になったことも、従来の特急車から改められた。また、編成中2両はデラックス・カーとされたが、JRのグリーン車並みの接客設備を誇るのに、追加料金は410円と安い。
現在は全車が更新工事を受け、、下半分がベージュとなり、内装もリニューアルされた。デラックス・カーも1両になった。現在は名阪乙特急や伊勢方面の列車にも一部使用されている。 
写真:名古屋線 桃園・伊勢中川間 2014.12.23
2610系。1972年に登場した。2年前に登場した2600系(現存せず)の増備版であるが、当初から冷房装置が装備された。4ドアであるが、扉間には長距離での使用を前提としてボックスシートが並んでいた。4両編成からなり、大阪よりから3両目の付随車にはWCも備わった。
一見すると通勤型電車との見分けがつかないが、側窓の天地寸法が通勤型電車よりも広く取られているのが特徴である。
その後、5200系が登場した後は急行運用が減少したこともあり、ボックスシートからロングシートに改造された。だが、1996年になって、一本がクロス/ロングのデュアルシートに改造された。本邦初の機能だが、当形式が試験に供された。その後2本も同様の工事を処されている。
登場後30年以上が経過したが、製造された17本総てが大阪、名古屋線系統で活躍している。
写真:大阪線 大和朝倉・長谷寺間 2013.9.23
 


23000系。”伊勢志摩ライナー”。1993年に登場した。伊勢方面への利用客増加を図るために投入された意欲作で、21000系”アーバンライナー”以来のイルカ形前面もさることながら、名阪間運用で大阪方から2両目に見えるワイドビューのサロンカー(コンパートメント方式の座席)もセールスポイントである。車体色は黄色と白をベースにしたものとなり、近鉄特急にまた新たな仲間が加わったことを大きくアピールできた。
6両固定編成であるが、先頭車は付随車となり、主電動機の出力を上げることで、21000系と編成当たりでの出力は揃えられている。
登場翌年の志摩スペイン村の開業に合わせてデビューした当形式、大阪、京都、名古屋から伊勢志摩地域へのアクセス特急をメインに使用されている。
2012年よりリニューアル工事が施され、全席禁煙となり、中間車1両に喫煙スペースが設置されたほか、奇数編成の外観は上半分がサンシャインレッドとなり、イメージが変わった。

上写真:偶数編成はリニューアル後も上半身は黄色だが、裾部にオレンジの帯が入った。
大阪線 三本松・赤目口間 2013.8.13
下写真:上半身がシャインレッドとなった奇数編成。近鉄有数の撮影ポイントを行く。
大阪線 室生口大野・三本松間 2015.8.14

5820系。2000年に登場した。同年に登場した3220系から始まる”シリーズ21”の第2弾となる車両である。デュアル・シート仕様で新造された5800系をベースとしているが、車体は一新、「人にやさしい」をコンセプトに、吊皮の高さが場所によって変えられ、座席の仕切棒も加わっている。
6両固定編成となっており、奈良線用に5本、大阪線用に2本配置されている。奈良線用の車両は、全車阪神への乗入対応車となっており、難波から阪神へ乗り入れる運用にメインで就く。大阪線用の車両は、大阪方先頭車と3両目の付随車にWCが備わり、主に山田線直通の(快速)急行運用に充当されることが多い。

写真:山田線 漕代・斎宮間 2015.2.14
 
9020系。2000年に登場した奈良・京都線用の通勤型電車である。「人にやさしい・地球にやさしい」をキーワードとして、バリアフリー、環境問題、資源問題に配慮した21世紀のスタンダード車両(近鉄HPより引用)”シリーズ21”の第2弾である。2両編成で、5820系や9820系の増結版である。
前面はこれまでのスタイルを一新し、前面窓は天地寸法を大きく取ったものとなり、貫通路から傾斜がついた立体的な前面が斬新である。塗装は上半分がベージュに、下半分はホワイトとなり、新時代の到来を告げた。
京都、橿原、天理線でも使用されるほか、2009年3月から開始された阪神電鉄への乗入にも充当される。

写真:京都線 新祝園・木津川台間 2010.12.4
22600系。”Ace”2009年に登場した汎用特急車である。22000系の後継車といった車両で、基本的な車体構造は、同系列を踏襲しているものの、曲面に丸みを持たせて、流線形状に近づいたものとなった。正面窓の回りは黒く塗られ、貫通路の窓も含め、こちらは直線になっている。側面窓の天地寸法も拡大された。
2両編成と4両編成が存在し、MT比は1:1とされている。室内は座席間隔が広げられたほか、リクライニングシートの快適性も向上した。今後、増備が進められ、12200系を置き換えていく。

写真:山田線 漕代・斎宮間 2009.10.12
3000系。1978年に登場した。京都市交通局烏丸線との乗入を目的として登場した。地下鉄乗入ということで近鉄初のステンレス車となった。ほかにも、電機子チョッパ制御方式など、新たな機構が取り入れられ、試作的な意味合いが強い形式となった。4両編成であるが、当時は京都線内に3連運用があったので、西大寺側は先頭車が続く構成になっていた。
登場以来、コストパフォーマンスの問題などで、増備がされることはなく、本形式の登場10年後にようやく実現した烏丸線との相直乗入は、後継車の3200系が充当されることになった。散々待たされた挙句、”内定”していた運用を断られて不運に見舞われた車両ではある。
京都、橿原、天理線を中心に使用されていたが、2012年に廃車された。全車がステンレス車になった鉄道も多い中、逆に近鉄はステンレス車を1両も有しないという珍しい私鉄になった。
写真:京都線 興戸・三山木間 2008.12.6
22000系。”Ace”1992年に登場した汎用特急車である。それまでの”ACE CAR”であった10400系や11400系の代替車として登場した。車体デザインはおよそ30年ぶりに一新されたが、曲面を多用し、天地寸法が拡大され、側面窓は連続窓となっている。塗装はオレンジ+ブルーの2色から構成されているものの、前面にブルーは配色されておらず、丸く膨れた車体形状が強調されたような感じとなった。
2両編成と4両編成があるが、全て電動車となり、MT比が1:1だった従来の汎用特急車とはこの点も異なる。
完全にモデルチェンジされた特急車ではあるが、従来車との併結は可能で、日常的に手を組んで特急運用に従事している。
写真:山田線 漕代・斎宮間 2009.10.12
1200系。1982年に登場した。前年に登場した1400系の2両版である。この系列は近鉄では初めて界磁チョッパ制御が採用された。前面も従来の3枚窓が並列するタイプから、窓上部にステンレスの飾り板が付くタイプに変わり、屋根のRも急になったことで、印象が大きく変わった。天地寸法も拡大されている。
1984年に登場した4両は、制御電動車+付随車という組み合わせが2本となっているが、大阪側は2430系2両と組んで4両編成を構成しており、編成内で凸凹が見られる異色の存在である。このグループは1211系と細分されている。
写真:山田線 漕代・斎宮間 2008.9.27
30000系。”VISTA EX”。近鉄特急の代表的存在である「ビスタ・カー」の3代目である。中間2両の付随車がダブルデッカーになっていて、制御電動車がサンドイッチする4両編成からなる。それまでのビスタ・カーは連接車構造で、3両一組となっていたが、30000系はボギー台車使用の独立車となり、車体長も当時の他特急車と同じく20mとされたため、編成当たりの定員も大きく増加した。
1996年からリニューアル工事を施されたが、特に2階建車は大きく様変わりし、これまでの小窓が並ぶスタイルから、連続窓が配された様式に変更された。塗装も2階建車はオレンジとホワイトのツートンにされ、先頭車も紺色の部分が減少したことで、明るいイメージが強くなった。更新に当たって愛称も現在のものに変えられた。
その後も続々と新型特急車が登場していったが、やはり近鉄特急は2階建!後輩に負けじと、各線の特急で活躍している。
写真:京都線 新祝園・木津川台間 2010.11.27
8810系。1981年に登場。上項の1200系(1400系)の奈良線ヴァージョンといった位置づけで、異なるのは裾絞りのある広幅車体であることと、制御装置(製造社が異なる)、編成構成(2両編成がなく、4両編成のみ)ぐらいである。
当初はマルーン単色の塗装で登場したが、窓回りを残して白に塗られるようになる。最初に塗り替えされたあとは、裾にマルーンの帯が残っていたが、塗装工程の簡略化か、帯は消えている。
現在では京都、橿原、天理線での活躍が主となっている。

写真:京都線 木津川台・山田川間 2013.10.13


12400系と12600系。”SUNNY CAR”。車内の明るさからこの名称がついたという同系列は、昭和52年に登場した汎用特急車である。12200系の新仕様車としての位置づけであったが、先頭車のオデコにリブがつき、ヘッドライトの場所も中のほうに寄るなど、差異点が多い。また、紺色の帯が窓下に収まるようになり、窓の形がはっきりと分かるようになった。車内はデッキが設置されるようになった。
MT比1:1の4両固定編成である。3本のみが製造され、1980年から増備は12410系に移行した。12410系は前面が少し改められたほか(12400系とは行先表示器や標識・尾灯が少し異なる)、洗面所の配置も異なっている。12410系は3両編成で登場したが、後に4両編成となっている。
12410系が5本製造された後、今度はまたマイナーチェンジされて12600系の登場となった。こちらは最初から4両編成で製造された。前面は12410系やリニューアル前の30000系と同様だが、12400系や12410系とまた洗面所の場所やドアの配置が異なっている。同じ”SUNNY CAR”といっても、意外に差異が多い。
現在3系列とも全車が現役である。前面の方向幕は更新工事の際に、登場時の白地のものから赤地のものや、LEDに改められて、少し印象が変わった。

上写真:12400系 山田線 漕代・斎宮間 2008.9.27
下写真:12600系 山田線 漕代・斎宮間 2009.10.12
8000系。1964年に登場。奈良線用の車両であるが、同年開業した新生駒トンネルによって、阪奈間は大型車両の直通が可能となり、その恩恵を受けるべく、幅広車体で登場した。206両もの車両が製造され、活躍の場は奈良線のほか、京都、橿原線系統にも広がっていった。その間、冷房化や、制御方式が抵抗制御から界磁位相制御方式に改められたりしている。塗装も当初はマルーン単色であったが、白と赤の組み合わせに改められた。
新系列車の登場で廃車が進み、現存するのは全盛期の2割ほどしかないが、奈良線の輸送力増大に寄与した功績は大きい。
写真:橿原線 近鉄郡山・筒井間 2013.10.28

8600系。1973年に登場。奈良線・京都線系統の車両である。8400系をベースにしているが、当初から冷房装置を搭載して製造されたため、屋根がそれまでの平構造から丸構造に改められたのが特徴である。また、前面への方向幕も設置され、登場当初は他の通勤型車両と外見上明確な差があった。走行性能面では同一である。後期車は冷房装置がそれぞれ独立して配置されたため、少し印象が異なる。
8000系からの転入車を除き、4両編成20本、6両編成1本が製造された。2020年5月時点でこの86両は全車健在。大半の車両は2度目の更新工事(1度目は側面方向幕設置)を受けている。

写真:京都線 木津川台・山田川間 2012.10.21
12200系。”SNACK CAR”。昭和42年に登場した12000系をマイナーチェンジし、1969年から7年間に渡って166両も製造された。近鉄特急の一大勢力を築き上げた車両である。2両編成の電動車運転室後方にスナック・コーナーが設置されていたことからこの名で呼ばれる。車体はそれまでの特急車よりも少し丸みを帯びたものになったが、前面は併結用の幌を観音開きのドアで完全に覆い、大変スマートな造形になった。その貫通路には矢羽根型の特急マークが燦然と掲げられていた。
MT比1:1の構成で2,4,6両編成が存在し、名阪ノンストップ特急での活躍も見られたが、名物のスナック・コーナーは早々と営業休止となり、製造途中からは省略された。設置された車両も後年になって撤去された。
昭和60年からは更新工事が開始され、特徴的な特急マークは撤去され、その場所には下部から行先表示器が移されて、12410,12600系と同じような形に改められた。
21世紀になって老朽化や利用客の減少で廃車が進行し、6両編成は現存しなくなったが、最盛期の半数近くが、単独で、あるいは、他者と手をつないで活躍を続けている。

写真:山田線 漕代・斎宮間 2008.9.27
   2000系。1978年に登場。2M1Tの3両編成で、12本が製造された。車体は当時の標準的なものであるが、特筆されるのはその足回りで、同年限りで引退した先代”VISTA CAR”10100系の電動機や、一部の車両は台車も流用している。近鉄のみならず、日本の鉄道史上に語り継がれる名車が、足回だけとはいえ、現在も健在なのは嬉しい限りである。
抑速ブレーキを含む発電ブレーキを装備しており、大阪線の青山越え運用にも就くことが出来るが、名古屋線運用がメイン。一部はワンマン化改造され、湯の山線、鈴鹿線で運用されている。また、名古屋方先頭車にWCがついた2107Fは、イヴェント用列車”つどい”に改造された。
写真:名古屋線 近鉄八田 2014.1.13
20000系。”楽”。団体専用電車である。近鉄は沿線に奈良、京都といった観光地や伊勢、天理といった宗教都市を有することで、団体客の需要も多いことから、こういった団体専用の電車を有している。20000系は平成2年にそれまでの団体専用車20100系の後継車として登場した。4両編成で、ハイデッカー構造となっており、先頭車後部付近が2階建て構造になっている。天地寸法が大きく取られた前面窓からの展望を確保するために、先頭部分は階段状に座席が配置されている。通路部分の天井が高くなっているが、これは、30000系の更新工事にも引き継がれている。
その後の団体専用車は余剰となった12200系から改造された編成があてがわれており、当形式は登場以来一本のみの存在となっている。
写真:山田線 漕代・斎宮間 2009.10.12 
2800系。1972年に登場。2〜4両編成で構成され、合計で60両が製造された。2610系の通勤型ヴァージョンということで、冷房装置搭載を前提とした丸屋根車体は踏襲しているが、側窓の天地寸法は他の通勤型電車と同じ高さとなっている。
2610系に引き続き、1997年から4両編成3本がクロス/ロングのデュアルシートに改造された。この3本の中間付随車にWCも装備された。
登場以来全車が30年が経過したが、編成組み換えで1両廃車になっただけであり、大阪、名古屋、山田、鳥羽線と幅広い範囲で活躍中。
写真:大阪線 大和高田・松塚間 2013.10.13
 


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